やさしいひと

2007年3月26日
やさしいひとは
時々、ひどくあたしを傷つける。

傷ついたあたしは
やさしいひとを傷つける。

やさしいひとはあまりにも正直に傷つくから
あたしはさらに傷ついて
あほみたいに途方にくれる。

やさしいひとは
それでもまだやさしいから

あたしはそっと逃げ出してしまった。

新しい眼鏡

2007年3月26日
眼鏡を新調した。
世の中が明るい。

本当に見たくない物と言うのは、目を閉じても見えるし、
本当に聞きたくない物と言うのは、耳を塞いでも聞こえる。

それはきっと
脳みそで見たり聞いたりしているからだ。

ずいぶん昔に見た君の寂しそうな後姿と
そんな君がひとりで蹴り続けるボールが弾む音。

今も見えるし、聞こえる。

思い出していると言うにはひどく現実的なそれらは
全部あたしが幼すぎたせいで、今もあたしを情けない気分にさせる。

赤と緑と

2007年3月13日
その赤い花の名を「ケイトウだよ」と教えてくれたのは彼女で
そんな彼女といっしょに働いた店の前には大きなやなぎの木があった。
ただそれだけの事なのに、どきりとした。


近所の小さな商店の店先にある煙草の自動販売機
硬貨を入れるところに貼られたガムテープ
夜になっても明るくならないただの箱

手の中で暖かくなった300円は今もポケットに入れたまま

たぶん今夜は彼女の夢をみる。

水中

2007年2月26日
あたしは全く泳げない。
海やプールは苦手だが、お風呂は好きだ。

湯船の中で、これまで失ったいろんな物を思った。
目に見えない物も含む、たくさんの物たち。

ほんの一瞬でも手に入れたという満足感と
失った事によるダメージと。

恋人を失う瞬間。
これからあたしはこのひとをうしなうんだ
そう確信した時の妙な安心感。

維持し続ける苦しさと
不足を抱えて生きる苦しさと。

どちらを選んでも
あたしたちは別々の人生。

そうだね

2007年2月12日
先日来た黒い鞄のおばさんが
「人間は死ぬと、天国へ行くのです。そこでみんな再会できるのです。」
と言っていた。

その話を友達にしながら、
「もしさ、それが本当なら、あの子にもあの人たちにも会えるのかな。彼女の子供達もいつかはあの子に会えるのかな。」と言ったら、
「ほらほら、そう言う事を言ってると、その手の勧誘に引っかかるんだよ。」
とたしなめられた。

またある人は
「良い人が早く死ぬと言うのは、この世修行する必要がなくなったから天国へ行って楽になれるって事なんだよ。」
と言った。

その話も友達にしたら、
「じゃあ、若いうちに苦しんで死ぬ人はどうなの?」と突っ込まれた。

うん。そうだよね。

しあわせ

2007年2月8日
たまたま平日の昼間家にいたら、
黒い鞄を下げた年配の女性がやってきてこう言った。

「あなたを幸せにするお手伝いをさせて下さい。」

あたしはこう答えた。

「私は今でも充分幸せですから、どうぞお気遣いなく。」

その女性が帰った後、
「今でも充分幸せですから。」と何度もつぶやいて笑った。

本当に幸せな人間はわざわざ暗示をかける必要などないよね。

夢の中で

2007年1月30日
懐かしめるほど老いてはないが、
やり直せるほど若くもない。

と、言われました。

後悔ばかりと言う事なのか。

記憶

2007年1月13日
もういない人なのに、
彼女を知る人たちが集まるとその人経由での思い出が増える。

これだけたくさんの人たちの心に今も深く残っているなんて、
本当にすごい人だったのだなぁと改めて思うよ。

むぎチョコマシュマロトルコ桔梗付箋紙衣装ケース一升瓶・・・・
あたしたちの日常の中に今も彼女はいる。

忘れなければ失わないってのは本当かもと思い始めた6年目。

執着か。

2007年1月10日
死んでしまいたいとは思わないが、
忘れてしまいたいとは思う。

あたしの存在が決して良い物ではないと知りつつ、
あなたの世界からまだ消える事などできない。

あなたはきっと、たやすくあたしを忘れるから、
あたしはこんなにもあなたの今にしがみつく。

新しい年に

2007年1月4日
意気地なしでごめん。
本当にごめん。

だけど、君の幸せとあたしの平穏を同時に叶えるには
こんなやり方しかなかったんだ。

今年以降が君とって幸せ続きになるよう心から祈るよ。

あたしはこれらを抱いて生きるから、
君はこれから起こる全ての事だけを抱えて生きてくれたらいい。

あいこい

2006年12月12日
ミスチルの歌に全く共感できず
あいとはそんなにすごいものなのか!
と思ってしまったあたしは

未だほんとうのあいと言う物を知らないらしい。


誠に申し訳ない。

持ち主不在

2006年10月19日
常にいい人でいようとする自分にいつものごとく少し嫌気がさしたので、あの子にどうでもいいような内容のメールを飛ばした。

今日もいいお天気です。
秋は何を食べてもおいしくて、本当に幸せです。
あなたは、どうですか?

とうの昔に持ち主を亡くしたアドレス。
メールはエラーで戻ってきたけれど、今日もあの子に救われている。
君達との関係が少しずつ日常から離れていく。

それも良いだろうと思う。

そもそも
あたしには日常と言う概念が薄く、
どこにいても、何をしてても、誰といても、
妙に浮いている自分を自覚して生きているのだ。

他人と何かを共有するのが苦手なのは、大人になった今も変わらず。
例えそれが、異性でも、思い出でも。
何も奪わず、何にも奪われず。たたそこにあるものだけを抱えて。

四角い箱の中で

2006年10月10日
あたしは学校が好きだった。

四角い箱の中に整列するさらに小さな箱。
その小さな箱の中に並ぶ四角い机。

決まった時間に鐘が鳴り、決まった時間に声がして。

時々見上げる四角い窓の向こうには、どこまでも続く青い空と、夢と、惰性と、ほんのわずかな諦めと。

近頃の学校は四角くないらしい。
あんなハイカラな箱の中に閉じ込められてちゃ落ち着かないだろうに。

学校は、限りなく日常に近い非日常なのだから、器は限りなく無機質な物がいい。

むせかえるほどの生命感を閉じ込めるには、命を感じさせない箱が良いのにと、あたしは洒落た校舎を見上げるたび残念に思うのだ。
そっと去って行った憎い彼女。

首筋に残るキスマーク。

もろこしヘッドでそっとなぞる。

かえる

2006年10月2日
雨上がりの車道には、かえるの轢死体。

そっとすくって、道端の土の上に移動する。
これで土にかえることができるだろうか。

私は毎日この家に帰り、
君は毎日あの家に帰る。

あの子が帰る場所は、そこではないどこか。

幼馴染からの電話は、
予想していたよりも深刻で。

あの子は今日、どこに帰るのだろう。

「あたしのところにくる?」
ついそう言ってしまったあたしを、
君は「相変わらず甘いね」と笑うだろうか。

くらす

2006年10月1日
共に暮らす事と、
共に生きる事とは違う。

けれども、最終的には
共に暮らしている人間にはかなわない。

衣食住を共にする相手。

それは既に
あたしの体の一部になっている。

彼女と彼がそうであるように、
あたしとこの人とは
ほぼ同じ物でできている。

煙草と珈琲

2006年9月28日
スルーラック。
あたしのツマラン感傷なんざ
鼻くそ丸めて梅仁丹だ

ぽいのぽいっ

決してやけになっているのではない

飢えております。

2006年9月11日
絶対に手に入らない物に惹かれておりまして。

手に入らないとわかっているので、
代わりの品を探そうと思ってはみたのですが、
代わりでは意味がないのです。

私の中では それ か それ以外 しかなく、
それ以外のものは全て意味を持たない物なのです。

そんなわけで、
私自身のそれに対する執着心がなくなるまで、
飢えた状態のまま、
途方に暮れるよりないと気付いた次第です。

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